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AIを活用した船舶用機器製造業のビジネスモデル変革

shipping container ship on the sea

概要

70年に渡り培ってきた自社のビジネスモデルだけでなく、海運業界全体の事業構造の再設計を目指して変革を推進


Impact

最新テクノロジーの活用だけでなく、将来の自動航行実現に向けた基礎技術の開発を支援

Key Technologies / Platforms

  • Microsoft Azure Stack Edge
  • Unity Game Engine
  • Computer Vision
  • IoT Edge
  • Azure Cloud

Industry

製造

Key Services

Artificial intelligence icon
Artificial intelligence
Digital product building
Digital product building



日本は海に囲まれ、経済は漁業、海運などの海関連産業に大きく依存しています。日本の航路には、巨大な貨物船やフェリーだけでなく、小さな漁船も行き交っています。6,000以上の島々を囲む海は、日本経済にとって不可欠である一方で、非常に混雑しています。

もう一つの課題は、労働人口の減少です。若い世代は、海上での生活にあまり強い関心を持ちません。船長は常に緊張状態に置かれ、過度のストレスやキャリア初期での燃え尽き症候群を引き起こす可能性があります。現代のキャリアには多くの選択肢があるため、何週間も巨大な船の上で働くことは魅力を失いつつあります。


日本企業の挑戦

このような課題に革新的な方法で取り組む企業がJRCSです。JRCSは70年の歴史を持つ、船舶用の制御盤やエンジン監視システムを製造するハードウェアメーカーです。同社は、安全性と効率性向上のため、海運業界に新たな価値を提供したいと考えていました。

JRCSは、将来的には自動航行が可能な貨物線やフェリーが登場すると考えていました。人手不足に加え、ブイや他の船舶、漁網の間を安全に航行するために、人間の負担を減らし、将来は人間の代わりに自動化されたシステムが導入される可能性を見込んでいました。

 


しかし、ハードウェア製造から自動航行船の開発へシフトすることは、JRCSにとって大きな変革でした。そのため、彼らは船舶の機械学習機能を開発するパートナーとしてマイクロソフトとの協業を開始するとともに、デジタルを駆使したソフトウェア主体の企業への変革に向けた支援をSlalomに依頼しました。

Slalomは、JRCSに対してアジャイル開発手法の導入を支援しました。これは、ハードウェア製造業でウォーターフォールモデルが主流だった同社にとって、大きな一歩となりました。
続いて、まだ製品化の段階ではありませんでしたが、12週間かけてアイデアを練り上げ、長期的な戦略を策定しました。その結果、最小限の実用的な製品 (MVP) の構築方法と全体像が明確になり、JRCSのチームはプロダクトロードマップ、アーキテクチャとサービス設計、機能リストなどの開発に必要なツールを揃えることができました。

さらに、最新のテクノロジーを活用した革新的なデバイスを開発するという目標が立てられました。このデバイスは、マイクロソフトのエッジコンピューティング、コンピュータービジョン、機械学習を活用して意思決定を支援するもので、ライブカメラの映像を取り込み、航路の効率化を図るものです。このデバイスは、タブレット端末で操作できるように設計され、SeaJapanと呼ばれる海運業界向けの展示会に出展することを目指して、短期間で開発が進められました。


チームワークとテクノロジー

JRCSは、組織全体を改革して最新のソフトウェア企業になることを目指していたため、JRCSとSlalom両社が同じ場所でブレインストーミングを行い、ビジョンを練り上げ、アジャイル開発プロセスに集中することを重視していました。Slalomは、JRCSの技術スキルと業界全体の変革を支援しつつ、ウォーターフォールモデルからアジャイル開発プロセスへの移行も支援しました。

COVID-19のパンデミックの影響によりSeaJapanは中止され、JRCSのチームも日本への帰国を余儀なくされましたが、Slalomは機械学習のエキスパート、エンジニア、品質保証担当者、アーキテクト、DevOpsエンジニア、Microsoft Azureのクラウドスペシャリストなどを加えて開発を続けるとともに、5つの異なるタイムゾーンに跨るチームを編成して支援しました。


Single iPad screen showing navigation interface.

テクノロジーの面では、Microsoft Azure Stack Edgeサーバーが最適な選択でした。この新しいサービスは、Azureのクラウドサービスを、海上のような遠隔地のアプリケーションでも利用できるようにする役割を果たします。
インターフェースとしては、船上での携帯性に優れたデバイスとしてiPadが選ばれました。乗員がどこでも簡単に持ち運び、監視できることが求められるためです。そして、コードベースの柔軟性と移植性、および大画面ディスプレイや HoloLens などの他のデバイスへの機能拡張の可能性を考慮し、すべての機能は Unity ゲームエンジン上に構築されています。

このようなチームワークやテクノロジーによって、船長に意思決定支援を提供するアプリケーションのプロトタイプが完成しました。現在、船からのライブストリーミングビデオは、Microsoft Edge デバイスに送られ、そのビデオは iPad に表示されます。同時に、IOT Edge を通じて機械学習エンジンにデータが送信されます。このビデオデータは、船首、左舷、右舷の3台のカメラから取得されます。これらの映像を統合することで、船の正面に何が映っているのかを完全に把握することができます。

次のステップは、既存のセンサーデータを統合することで、水平線上の物体だけでなく、それが船なのか、ブイなのか、鳥なのか、その他の物体なのかを判別できるようにすることを目指しています。


Single iPad screen showing navigation interface.

未来への展望

海運業界が完全な自動航行の船舶を実現するには、まだ長い道のりがありますが、このプロジェクトは確実に成果をもたらしています。Slalomは、自動航行に向けたビジョンを早期に具体化し、わずか 9 カ月で最初の顧客に意思決定支援のためのサービスを提供しました。そして、JRCS は、業界における実用的なソリューション提供を通じて先行することで、機械学習分野のイノベーターとしての地位を確立しました。さらには、長年に渡りウォーターフォール型開発を採用していたハードウェア製造業から、アジャイルかつ持続的なイノベーションを可能にするソフトウェア企業への変革を実現しています。

また、このプロジェクトを通じて、国際的なチーム、あるいは小規模なチームでも、事業戦略を共に構想し、双方のケイパビリティとテクノロジーを駆使することで、長年培ったビジネスモデルを再構築し、競争優位を確立できることが証明されています。





Let’s solve together.